Ⅹ-17Ⅹ|深海の蔵書

サプリメントの正体:製造側だから書けた業界の真実とDr.Painの処方箋

― 田村忠司『【新版】サプリメントの正体』を読む ―

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【新版】サプリメントの正体 表紙
取り上げた書籍『【新版】サプリメントの正体』田村忠司

医療機関向けサプリメーカー代表・田村忠司が、製造側の内部から暴露する業界の真実。99.9%が添加物の葉酸、人毛由来のアミノ酸、「目標値」に過ぎない配合量——飲めば飲むほど健康から遠ざかるサプリの正体と、本当に価値あるサプリの見極め方をDr.Painが医学的に解説する。

日本のサプリメント市場は年間約1.5兆円規模に達し、成人の約3人に1人が何らかのサプリメントを摂取している。しかし、その大半が本当に「効いている」のだろうか。医療機関向けサプリメーカーの代表として業界の内側を知り尽くした田村忠司氏が、製造側だからこそ書けた衝撃の真実を本書で明かす。

「このサプリ大丈夫?」と一度でも思ったら読む本——それが本書の副題だ。葉酸の99.9%は添加物、アミノ酸の原料は人毛・羽毛・豚毛、コラーゲンは腸で分解されてアミノ酸になるため「コラーゲンとして」吸収されることはない。

本書は、消費者が知らされていないサプリメント業界の構造的問題を暴き、同時に「それでも飲む価値のあるサプリ」の条件を示す、医療者・患者双方にとって必読の一冊である。

著:田村忠司(医療機関向けサプリメーカー代表)|出版社:東洋経済新報社|2024年

Ⅰ|業界の「ヤバい裏側」:原材料・配合量・品質の真実

本書が最初に暴くのは、サプリメントの原材料に関する衝撃的な事実だ。市販の葉酸サプリの多くは、葉酸そのものよりも結合剤・充填剤・コーティング剤などの添加物が重量比で99.9%を占める。アミノ酸系サプリの原料には、人毛・羽毛・豚毛・獣毛などが使用されることがあり、これは法的には問題ないが、消費者にはほとんど知らされていない1

配合量の問題も深刻だ。多くのサプリで表示されている配合量は「目標値」であり、実際の含有量は製品によって大きく異なる。グルコサミンは膝の痛みに効くとされるが、腸管から関節軟骨まで届く量は極めて少なく、有効性を示す高品質なRCTは限られている2。コラーゲンペプチドは消化管でアミノ酸に分解されるため、「コラーゲンとして」皮膚や関節に届くことはなく、通常のタンパク質摂取と生物学的に等価である。

「含有量が多いほど品質が高い」は誤りだ。吸収率・生物学的利用能・製造工程の品質管理こそが、サプリの価値を決める。

Ⅱ|本当に「飲む価値のあるサプリ」の条件

業界の問題を暴いた上で、田村氏は「それでも価値あるサプリ」の条件を提示する。著者が医療機関向けに開発・供給してきた経験から導き出された基準は、一般消費者向け製品とは一線を画す。

第一の条件は原材料の透明性だ。原産国・製造工程・第三者機関による品質検査結果を開示している製品は信頼性が高い。第二は吸収率の科学的根拠である。例えばビタミンDは脂溶性であり、食事と一緒に摂取することで吸収率が大幅に向上する。マグネシウムはグリシン酸塩・リンゴ酸塩などのキレート型が酸化マグネシウムより吸収率が高い3。第三は臨床エビデンスの質だ。プラセボ対照二重盲検RCTで有効性が示された成分(オメガ3脂肪酸・ビタミンD・マグネシウム・亜鉛など)と、エビデンスが乏しい成分を区別することが重要である4

Ⅲ|「飲むほど健康から遠ざかる」サプリの見分け方

本書が特に警告するのが、過剰摂取リスクのあるサプリだ。脂溶性ビタミン(A・D・E・K)は体内に蓄積するため、過剰摂取で毒性を示す。ビタミンAの過剰摂取は肝毒性・頭蓋内圧亢進・催奇形性のリスクがある5。ビタミンDも過剰摂取では高カルシウム血症・腎障害を引き起こす。

抗酸化サプリの大規模RCTでは、ベータカロテンの高用量補充が喫煙者の肺がんリスクを増加させたという衝撃的な結果(CARET試験)が報告されている6。これは「抗酸化物質は多いほど良い」という直感的な信念を根底から覆す。また、高用量の鉄サプリは酸化ストレスを増加させ、腸内細菌叢を乱す可能性がある。サプリは「食品」ではなく「薬理活性物質」として扱うべきであり、医師・薬剤師への相談なしに高用量を長期摂取することは避けるべきだ。

◉ 発展章|Dr.Painの視点:慢性疼痛患者へのサプリメント処方の科学

慢性疼痛の臨床現場では、患者の多くが何らかのサプリメントを自己判断で摂取している。Dr.Painとして、エビデンスに基づいたサプリメント活用の指針を示したい。

エビデンスレベルが高いもの(慢性疼痛関連):ビタミンD(血中25(OH)D < 30 ng/mLの場合、補充により線維筋痛症・慢性腰痛の疼痛スコアが改善するRCTあり)、マグネシウム(NMDA受容体チャネルブロッカーとして中枢感作を抑制する可能性、片頭痛予防のメタ分析で有効性確認)、オメガ3脂肪酸(抗炎症作用、関節リウマチ・神経障害性疼痛での補助的有効性)。

エビデンスが乏しいもの(注意が必要):グルコサミン・コンドロイチン(変形性膝関節症への有効性はGAIT試験で否定的)、コラーゲンペプチド(関節痛への有効性は低品質研究のみ)、高用量抗酸化サプリ(過剰摂取リスクあり)。

本書が示す「製造側の真実」は、医療者が患者のサプリメント使用を適切に評価・指導するための重要な視点を提供する。「飲んでいるサプリを全部持ってきてください」——この一言が、慢性疼痛治療の新たな扉を開くかもしれない。

結び

『サプリメントの正体』は、消費者・医療者双方にとって不都合な真実を突きつける。年間1.5兆円市場の大半が、科学的根拠の乏しい製品で占められているという現実は、医療リテラシーの問題として真剣に向き合わなければならない。

Dr.Painとして強調したいのは、「サプリメントを飲む前に、食事・睡眠・運動・ストレス管理を最適化することが先決」という原則だ。これらの基本的な生活習慣が整った上で、エビデンスに基づいた特定のサプリメントを必要最低限の用量で使用する——これが科学的に正しいアプローチである。本書は、その判断を下すための「武器」を読者に与えてくれる。

参考文献

  1. 1.田村忠司. 【新版】サプリメントの正体. 東洋経済新報社. 2024.
  2. 2.Wandel S, et al. Effects of glucosamine, chondroitin, or placebo in patients with osteoarthritis of hip or knee: network meta-analysis. BMJ. 2010;341:c4675.
  3. 3.Schuchardt JP, Hahn A. Intestinal absorption and factors influencing bioavailability of magnesium—an update. Curr Nutr Food Sci. 2017;13(4):260-278.
  4. 4.Wepner F, et al. Effects of vitamin D on patients with fibromyalgia syndrome: a randomized placebo-controlled trial. Pain. 2014;155(2):261-268.
  5. 5.Penniston KL, Tanumihardjo SA. The acute and chronic toxic effects of vitamin A. Am J Clin Nutr. 2006;83(2):191-201.
  6. 6.Omenn GS, et al. Effects of a combination of beta carotene and vitamin A on lung cancer and cardiovascular disease. N Engl J Med. 1996;334(18):1150-1155. (CARET trial)